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zoom RSS 道祖問答 (芥川龍之介)

<<   作成日時 : 2017/05/07 15:01  

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ウェブリブログはいつの間にか,90日間記事を書かないと特別な広告を強制表示するようになったようだ.どうしてもこれを消したいので,久しぶりにエントリを書いてみたい.

twitter で,以下のようなツイートを見かけた.




これには賛否両論あるようだが,もはや日本仏教は妻帯も相続もあるような宗教になっており,それを果たして仏教と称していいのかよく分からない.というわけで,上記のようなサイケな法要もありではないかとは思った.そして,なんとなく芥川龍之介の道祖問答という小品を思い出した.

道祖問答とは,以下のような作品である.天王寺の道命(どうみょう)阿闍梨(あざり)は,「天が下(あめがした)のいろごのみ」とも呼べる男であった.阿闍梨は,ある春宵のころ,和泉式部のもとに忍ぶ.そして情交を終えたのち,一番鶏も鳴かない未明に,ひとり法華経を読誦するのである.このような生活も,阿闍梨にとってはなんの矛盾もなかった.

このようなとき,翁の形をした五条西の道祖神(さえのかみ)が,阿闍梨の読経に礼を述べたいとして現れる.阿闍梨が法華経を読むのは今夜に限った話ではないのに,なぜ今宵,道祖神は現れたのか.道祖神は,以下のように話すのである.

「清くて読み奉らるるときには,上(かみ)は梵天帝釈(ぼんてんたいしゃく)より下(しも)は恒河沙(こうがしゃ)の諸仏菩薩まで,ことごとく聴聞(ちょうもん)せらるるものでござる.よって翁は下賤の悲しさに,御身近うまいることもかない申さぬ.今宵は――」といいかけながら,急に皮肉な調子になって,「今宵は,御行水(ごぎょうずい)も遊ばされず,かつ女人の肌に触れられての御誦経(ごずきょう)でござれば,諸々の仏神も不浄を忌(い)んで,このあたりへは現ぜられぬげに見え申した.されば,翁も心安う見参に入り,聴聞の御礼申そう便宜を,得たのでござる」


これに激怒した阿闍梨は,道祖神を激しく叱りつける.

「よう聞けよ.生死即涅槃(しょうじそくねはん)といい,煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)というは,ことごとく己(おの)が身の仏性を観ずるという意(こころ)じゃ.己が肉身は,三身即一の本覚如来(ほんがくにょらい),煩悩業苦の三道は,法身般若外脱(ほっしんはんにゃげだつ)の三徳,娑婆世界は常寂光土(じょうじゃつこうど)にひとしい.道命は無戒の比丘じゃが,既に三観三諦即一心(さんかんさんたいそくいつしん)の醍醐味を味得した.よって,和泉式部も,道命が眼(まなこ)には麻耶夫人じゃ.男女の交会も万善の功徳じゃ.われらが寝所には,久遠本地(くおんほんじ)の諸法,無作法身(むさほっしん)の諸仏等,影顕(えいげん)し給うぞよ.されば,道命が住所は霊鷲宝土(りょうじゅほうど)じゃ.その方づれ如き,小乗臭糞(しょうじょうしゅうふん)の持戒者が,みだりに足を容(い)るべきの仏国でない」
 こういって阿闍梨は容(かたち)をあらためると,水晶の念珠を振って,苦々しげに叱りつけた.
「業畜(ごうちく),急々に退(の)きおろう」



本当に三観三諦即一心の醍醐味を味得したのか,疑いたくなるような物言いではある.

宗教者にとって性は,(もちろん我々にとっても)求道の際の一大難事である.我々はその意味さえも分からず,その煩悩に一生とらわれ,時には破滅していく.こう考えると,この作品「道祖問答」は,イエスの荒野の誘惑や仏陀へのマーラによる誘惑に対する,芥川流アンチテーゼとも見ることもできる.

したがって,このテーマは,文学的にはもっと深掘りすることもできただろう.しかし,芥川はこのようにきれいにまとめてしまった.それは,この作品を書いた当時,24才であった芥川の若さや才気煥発のせいであるともいえる一方で,悪く言えば,秀才らしい小賢しさや文学者としての器の小ささのせいであるともいえる.この後者は,私自身を見ているかのようで,だから私は芥川作品を忘れられないのかもしれない.

そしてもう一つ見逃せないのは,この作品にかすかに流れているユーモアである.それは大げさにいえば,芥川作品にあらわれる,一つの人間愛のかたちであり,それがより色濃くあらわれる作品も多い.このことも,私が芥川の小説を愛する理由のひとつである.

いずれにせよ,「道祖問答」は,はっきり言えば駄作ではあるが,(以降,次第に病んでいく前の)芥川らしい作品であり,私の好きな芥川小説のひとつである.





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