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zoom RSS 恋に恋する

<<   作成日時 : 2014/02/28 22:23   >>

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以前 twitter でつぶやいた内容をここにメモしておきたい.


少し前になるが,はてなブログで,恋に恋するお年ごろといった内容のエントリを読んだ.それでいろいろと思うようなところがあったので,コメントするような内容のエントリを書こうかとも思ったのだけど,考えてみれば,それは私の柄ではない.

その代わりといっては何だが,twitter でつぶやいたように,「恋に恋する」という人口に膾炙したフレーズを最初に言い出したのは誰だろうか,ということを考えた.いろいろと検索してみたのだが,どうもよく分からない.有名なところでは,国木田独歩の小説と萩原朔太郎の詩(「月に吠える」所収)に,「恋を恋する人」という同名の作品がある.年代を考えれば,国木田独歩の作品が初出ということになるだろうか.なお,芥川龍之介の小説(未完)に「大導寺信輔の半生 ――ある精神的風景画――」があるが,その中にも,「独歩は恋を恋すと言へり.予は憎悪を憎悪せんとす.貧困に対する,虚偽に対する,あらゆる憎悪を憎悪せんとす」とあるので,やはり独歩が初出ではないだろうか.

私は,十代のころ,独歩と朔太郎の「恋を恋する人」を読んだ記憶があり,今回あ
らためて読み直してみて,その感慨を新たにした.特に後者については,高校のときの国語教師が萩原朔太郎のファンで,この詩について熱心に解説したことを思い出す.

それはともかく,「恋を恋する」という表現は,外国語の直訳調で,当時としてもインパクトが大きかったのではなかろうか.そもそも,恋愛という概念は明治以前と以降では大きな違いがあるようで(Wikipedia の恋愛の項参照),その観点からも,斬新な表現であったことだろう.そして,「恋を恋する」が現在のように「恋に恋する」という表現に変わっていった過程も,文法の歴史的な観点からすれば,興味深いかもしれない.


さらに,「恋に恋する」といういわゆる少女趣味的な表現から,私は,自分とその運命の人(異性)とは,小指と小指が赤い糸で結ばれているといった,俗信のことを連想した.これについては,twitter でツイートしたとおり,長い間私はその初出を太宰だと思っていた.

太宰の「思い出」という作品に,以下の記述がある(なお,太宰の「津軽」でもこの部分は引用されている):

秋のはじめのある月のない夜に,私たちは港の桟橋へ出て,海峡を渡ってくるいい風にはたはたと吹かれながら赤い糸について話しあった.それはいつか学校の国語の教師が授業中に生徒へ語って聞かせたことであって,私たちの右足の小指に眼に見えぬ赤い糸がむすばれていて,それがするすると長く伸びて一方の端がきっとある女の子のおなじ足指にむすびつけられているのである.ふたりがどんなに離れていてもその糸は切れない,どんなに近づいても,たとひ往来で逢っても,その糸はこんぐらかることがない,そうして私たちはその女の子を嫁にもらうことにきまっているのである.


そして今回改めてこの作品を読み直してみて,私は,長い間自分が誤解していたことに気がついた.「思い出」は,太宰の自伝的小説でまたその処女作と言われており,太宰の傑作の一つでもあるが,上の文章からも分かるように,赤い糸の話はそもそも国語教師の話であって,太宰自身が言い出したことではないようだ.また,ここでの赤い糸は,手の小指ではなく,足の小指に結ばれてるところが,現代のいわゆる赤い糸の俗信とは異なっている.こういったことは,長い間失念しており勘違いしていた.

そこで改めて調べてみると,Wikipedia に以下のような項目があった.

運命の赤い糸
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8B%E5%91%BD%E3%81%AE%E8%B5%A4%E3%81%84%E7%B3%B8


Red string of fate
http://en.wikipedia.org/wiki/Red_string_of_fate


上記のページによれば,赤い糸の伝説は,そもそも中国に由来するという.話はそれるが,上記Wikipedia の英語のページ(Red string of fate)では,日本のアニメや漫画を重点的に解説していて,面白い.日本アニメや漫画の海外のファンがいろいろと編集したのであろうか.




それにしても,私が十代のころに読んだであろう,「恋を恋する人」や,赤い糸の伝説の話をいまだに(うっすらとでも)記憶しているのは,やはり当時の私がそういった話にときめきのようなものを感じたからではないかと思われる.ところが,まごうかたなき中年となった今の私では,そういった話にときめきのようなものは最早感じられない.むしろ,明鏡止水,動かざること山の如しといった心境である.そうでなければ,こんな分析的(というほどでもないが)なエントリを書きはしない.中也ではないが,思えば遠く来たもんだとしみじみ感じられて,苦笑いをしたのであった.






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